こう暑い毎日が続けば、涼しさを求めるのが人間である。
夏と言えば「TUBE」に「稲川淳二」だが
最近はどちらもあまり見かけない。
 
ならばここは1つ、7月末まで私がいたビルの話をしよう。
その話を聞いたのは、閉鎖まで2ヶ月を切った頃だった。
震災後から相次いだテナントたちの退出で 
すでに4階から上は全てが空室となっていた。
それでも管理の男性は定期的に各フロアをチェックし
また、清掃も続けられていた。
 
そしてなぜか私の周りには霊感の強い人が多い。
管理の男性もその1人で
姿こそ見えないが気配を感じることができるらしい。
「実は8階にいるんだよね」
ある時、彼はそう言った。
以前からそのフロアにだけ
独特なものを感じていたのだそうだ。
 
さらにそれを裏付けたのが清掃の男性である。
彼は完全に姿を見ることができるそうで
「ちょうどあそこに座ってこっちをジ~っと見てたよ」
とエレベーターの方向を指さして言った。
上から順番にモップをかけながら下りて来ると
8階だけが重苦しく空気が違うらしい。
拭き掃除の間中、見られている視線を感じると言う。
それが7階へ下りるとス~っと楽になるというのだから
かなりのものがあるのだろう。
 
そして管理の男性はこんなことも言っていた。
以前その8階にいたテナントの女性が、ある時
ちょうど女子トイレに入って行く女の人の後ろ姿を見た。
女子トイレには個室が2つある。
当然1つは使用中であるものと思い、彼女が入って行くと
トイレには誰もいなかったというのである。
きゃあ~!!!
 
幸い、3階にあった私の会社は無くなったので
もうこのビルに行くこともないだろうとホッとしていた。
けれど人生、明日はどうなるか分からない。
今回私を拾ってくれた会社は
あろうことか、今もなおこのビルに入っている。
そして私は9月からまた、そこへ通うのだ。
タラ~ン・・・。
 
通勤環境が変わらないのは嬉しいことだが
それを思うと何やら落ち着かない小心しーちゃんである。